臥龍点睛‐がりょうてんせい‐
スクールカウンセラーだより 2号通信 (正しくは画龍)
スクールカウンセラーだよりは保護者向けに書かれています。今回からは「学校の問題はなぜ増えたか」という僕なりの答えを少しずつお話していきたいと思います。ただこの文章は私見であり、ひとつの考え方にすぎません。子どもたちのことを考えるきっかけになってくれれば幸いです。
森の人
山田さん(仮名:45歳)は、会社員です。朝、新聞を読み、車で通勤します。仕事では、書類を書いたり、パソコンや携帯電話を使ったりします。仕事が終わると家でテレビを見たり、ビデオを見たりします。山田さんは、ごくごく普通の日本人です。
ところで、ウルルン滞在記などのテレビで、アマゾンやアフリカの森の中に住む人たちが時々紹介されます。彼らは、わずかばかりの衣服を身につけ、森を駆け狩りをし、銛(もり)で魚を獲り、やせて乾いた畑で少しの穀物を収穫します。自然の中に住み、自然とともに生活をしています。人間の本来の姿なのかもしれません。森の人たちに山田さんの日常の話しをしても、大うそつきと思われて信用してもらえないでしょう。
でもそれが、うそではなく本当のことだと分かったら、森の人たちは山田さんのことをどう思うでしょうか?字の読み書きができて、車の運転ができる。森の人にとっては、それだけでものすごいことではないでしょうか?
森の人から見ると山田さんは、
「えっ、字が読めるの?すっごいねぇー。」
ということになります。
今の日本じゃ字が書けて当たり前。それをすごいなぁって言ってくれる人はいません。でも、これってすごいことじゃないんでしょうか?森の人から見てもそうですが、日本だってつい数百年前までは、読み書きのできないのが当たり前でしたから。余談ですが、千円札の野口英世(明治9年〜昭和3年)の母は、英世が子供の頃、字の読み書きができなかったそうです。
山田さんはごくごく普通に日本人ですが、森の人から見ると、
「山田さんは、スーパーマン」になります。
日本で生まれた子、森で生まれた子、赤ちゃんにそんなに大きな違いはありません。しかし日本で生まれた子は、20年後にはスーパーマンになることが宿命付けられています。これは子どもたちにとって、結構大変なことなのです。先進国ほど学校の問題は多い。先進国ほど大人になるのが遅い。それはこんなことが関係しているのかもしれません。
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